クールビズはなぜ「だらしなく」見えるのか?TPO自由化時代の基準

この記事でお伝えしたいこと

クールビズがだらしなく見えてしまう最大の理由は、暑さや服の素材のせいではなく、社内に「判断基準」が存在しないことです。

環境省は2021年度から全国一律のクールビズ実施期間(「5月1日〜10月31日」など)の設定を取りやめ、服装の判断を「各自・各社」へ委ねる方針にシフトしました。

国が基準を一律で示さなくなった今、会社が独自の基準を示さないまま「各自の判断で自由に軽装にしていいよ」と丸投げしてしまうと、社員ごとの解釈の差がそのまま「だらしなさ」として表に出てしまいます。

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「クールビズOK」だけ言われて、社員は何を着ればいいのか

「今年も暑くなってきたから、明日からクールビズでOKです」

5月や6月になると、こうした社内アナウンスが流れます。
しかし、この一言だけで、どこまで軽装にして良いか、現場の社員は正しく判断できているでしょうか。

「ノーネクタイならいいのか」
「ポロシャツやスニーカーはありなのか」
「取引先に行くときもノージャケットでいいのか」——。

明確なガイドラインがない職場では、社員は手探りで服を選ぶことになり、結果として取引先や社内で違和感を生んでしまうのです。

クールビズとは?(2026年時点の正しい理解)

まず、2026年現在のクールビズの正しい定義と背景を再確認しておきましょう。

クールビズとは、室温を適正に保ち、それに適した快適で働きやすい軽装で過ごすライフスタイルのことです。

ここで多くの方が勘違いされているポイントが「28℃」という数値です。
これはエアコンの設定温度ではなく、「実際の室温の上限目安」を指しています。
また、厚生労働省の「事務所衛生基準規則」においても、室内の努力目標値として温度や湿度の適正管理が定められています。

近年、環境省は「デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)」の一環として、TPOに応じた服装の自由化(オフィス服装改革)を推進しています。
単に「ネクタイを外す」ということではなく、業務内容や対面する相手(TPO)に合わせて、自発的に快適な服装を選択することが求められているのです。

なぜ会社は服装の基準を示さなくなったのか?

かつては「5月1日になったからクールビズ」と、国が定めた期間に合わせて一斉にスタートすれば済みました。
しかし、なぜ今、多くの企業で基準が曖昧になってしまっているのでしょうか。

理由はシンプルで、国が一律の期間設定をやめ、「各自・各社で判断してください」という方針に移行したからです。

地域によって気温差があり、働き方(内勤・外勤・リモートワーク)も多様化した現在において、国が一律の基準を下ろすのをやめたのは非常に合理的な進化です。

しかし、企業側の実務としては課題が残ります。
方針の自由化は前進ですが、「会社としての判断基準」を作らないまま自由化だけを進めると、社員個人の価値観のギャップがそのまま『会社の印象のバラつき』になってしまうのです。

【商談や採用の場で、社員の印象が会社の評価にどう影響するか】

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何が「だらしなく」見えるのか(具体4項目)

現場で「あの人のクールビズ姿、なんだかだらしないな…」と思われてしまう原因は、ネクタイの有無や服の価格ではありません。
本質の原因は「素材の状態」と「手入れの不備」にあります。

特に注意すべき4つのポイントを具体的に解説します。

1. シワ(襟元・背中・パンツ)

・NGな状態:ノーネクタイにした結果、ジャケットで隠れていたシャツの襟元がパカッと開き、クタクタに折れ曲がっている。パンツのヒザ裏や背中に深いシワが入っている。

・OKな状態:ボタンダウンシャツや台襟のあるシャツを選び、ノーネクタイでも襟立ちが美しい状態をキープ。形態安定加工やアイロン掛けが徹底されている。

2. 透け・下着の露出

・NGな状態:薄手の白シャツやポロシャツから、黒や柄物のインナーが透けて見えている。またはVネックが深すぎて胸元や胸毛が見えている。

・OKな状態:肌色に近いベージュやシームレス(切りっぱなし)のインナーを着用し、下着の透けやラインを完全に防止している。

3. サイズ感の崩れ

・NGな状態:暑いからといってダボダボのオーバーサイズを着ている、あるいは太ってサイズが合わなくなりボタンや生地が引っ張られている。

・OKな状態:肩幅や着丈がジャストサイズの服を選んでいる。服のサイズが合っているだけで、清潔感と整った印象は跳ね上がります。

4. 足元(靴・スラックスの裾・ソックス)

・NGな状態:かかとが擦り減った靴、素足に見える極短ソックスでスネ毛が見えている、すそが溜まりすぎているパンツ。

・OKな状態:手入れされたレザーシューズや無地のきれいめスニーカー。座っても素肌が見えない適度な長さのソックスを着用している。

特に40〜50代の男性社員の場合、年代に合わせた服装や眉・髪型の整え方を押さえておくだけで見違えるようにスマートになります。
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会社が定めるべき「軽装ルール」の作り方

社員を迷わせず、誰が見ても清潔感のあるクールビズ運用を行うために、企業が作成すべき「軽装ガイドライン」の作成手順を5つのステップで解説します。

1.「社外向け(外勤)」と「社内向け(内勤)」で分ける

「社外の人と会う日はジャケット持参」「一日中社内でのPC作業の日はポロシャツOK」など、TPOに合わせて明確に区分します。

2.「業種・職種」の特性を反映させる

堅い金融・士業なのか、動きやすさが求められる現場職なのか、オフィスカジュアルが通じるIT系なのか、自社の業界水準に合わせたラインを引きます。

3.「禁止事項の列挙」ではなく「写真や具体例」で示す

「派手な服はNG」「不快感を与えないこと」といった文章表現は解釈が割れます。「OKな着こなし」「NGな着こなし」の写真やイラストを添えて視覚的に提示するのが最も効果的です。

4.ガイドラインに「更新日」を入れる

「2026年7月改定」のように日付を入れることで、毎年時代に合わせて見直している「活きたルール」であることを社員に意識させます。

5.例外(猛暑日や移動時)の扱いを明記する

「移動中の熱中症対策として日傘や帽子の着用を推奨する」「外気温が35℃を超える日はノージャケットを全面許可する」といった健康面への配慮事項を記載しておきます。

よくある質問

Q1. クールビズの期間は、会社で勝手に決めてしまって良いのですか?

A.はい、問題ありません。国が一律の期間を設定していないため、地域の気温変化や自社の空調運用に合わせて「わが社は5月15日〜10月15日を推奨期間とする」など自由に設定して構いません。

Q2. クールビズで「ポロシャツ」や「スニーカー」の着用を許可しても大丈夫ですか?

A.職種やTPOに応じた基準があれば全く問題ありません。ただし、「台襟付きの無地ポロシャツ」「黒や白のシンプルなレザー調スニーカー」など、ビジネスシーンに馴染むアイテムの条件を具体的に提示することが成功のポイントです。

Q3. 訪問先の企業が「上着着用」の文化だった場合、どう合わせるべきですか?

A.基本は「相手のTPOに合わせる」がビジネスのマナーです。移動時はノージャケットでも、相手企業の受付に入る手前でジャケットを羽織れるよう、夏用スラブジャケットなどを一着持参するのが最も安全で誠実な対応です。

Q4. 室温28℃の設定は絶対に通気・遵守しなければいけませんか?

A.いいえ。「エアコンの設定を28℃にする」という意味ではありません。建物の構造や日差しによって室温は変わるため、あくまで「実際の室温が28℃程度」になるよう柔軟に調整してください。湿度が高い日は設定温度を下げたり除湿を行ったりして、社員の健康と作業効率を優先することが推奨されています。

まとめ:自由化した会社ほど、明確な基準が要る

クールビズがだらしなく見えてしまうのは、社員個人の意識が低いからではなく、会社が「どこまでが良くて、どこからがダメなのか」という基準を示していないからです。

服装の自由化やTPOに応じた働き方が進む時代だからこそ、「各自の判断」に丸投げせず、自社のブランドや職種に合った「身だしなみガイドライン」を明文化することが求められています。

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著者情報

代表取締役・代表講師 SHUN(土方俊平)
代表取締役・代表講師 SHUN(土方俊平)
株式会社メイクアンリミテッド代表取締役・代表講師。化粧品業界や人材業界での販促企画、人材育成、マネジメント経験を経て、2014年より法人研修事業を展開。全国の企業・団体・教育機関を対象に、女性社員向けメイクアップ研修、男性社員向け身だしなみ研修、第一印象・印象管理研修の企画・登壇を行う。著書の出版、美容雑誌の取材・監修実績も持つ。